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みんなの門下を調べてみた

日本古来の文化として発展を遂げてきた将棋ですが、現在、相撲界や落語界などと同様に師弟関係を結ばない限り、プロの道へ進むことはできないことになっています。

師弟関係になるきっかけとして、

・師匠が自分の通う将棋教室の講師であった。

・道場の席主に師匠を紹介してもらった。

・自ら手紙で棋士に師匠を依頼した。

など

と手段は様々です。

 

というわけで、早速、将棋界の門下(師弟)について調べてみました。

 

個性あふれる門下

2021年6月20日現在、棋士(棋士番号有)327を対象に調べた結果、門下が多いトップ5は以下のとおりとなりました。

 

 

森信雄門下が名だたる昭和の名伯楽たちを抑えて堂々の1位となりました。

門下には生前、羽生九段と互角に渡り合った伝説の棋士村山聖九段を筆頭に今年度のA級昇級を決めた山崎隆之八段や竜王経験もある糸谷哲郎八段など個性あふれる弟子たちが名を連ねています。

 

森信雄門下の面々

・村山聖九段

・増田裕司六段

・山崎隆之八段

・安用寺孝功七段

・片上大輔七段

・糸谷哲郎八段

・澤田真吾七段

・大石直嗣七段

・千田翔太七段

・竹内雄悟五段

・西田拓也五段

・石川優太四段

・高田明浩四段

※段位は2021年6月20日現在

 

現在も森信雄門下の奨励会員が多数在籍しておりますので、これからもますます人数を伸ばしそうな勢いです。

 

一大勢力が止まらない!?

では、現役棋士(171名)ではどうでしょうか。

 

2021年6月20日現在

現役棋士においても、森信雄門下が12人とトップとなりました。

そのあとに続くのが所司和晴門下の7人、そして、安恵照剛門下、桜井昇門下、米長邦雄門下、小林健二門下の6人となっています。

小林健二門下は前期三段リーグにおいても森信雄門下とのワンツーフィニッシュで新四段が誕生したばかりですので、今後の注目株となってきそうです。

 

大所帯の変遷

では、1970年から2020年まで50年間における10年ごとの弟子が多い門下トップ3を見ていきましょう。

 

1970年(※1)
No. 門下 人数 備考
1 木見金治郎門下 8人
2 渡辺東一門下 5人
3 土居市太郎門下 4人
3 板谷四郎門下 4人

(※1)当時の現役棋士82人(棋士番号有)が対象

 

1970年は大山康晴十五世名人升田幸三実力制第四代名人などを擁する木見金治郎門下が隆盛を誇っていました。

 

1980年(※2)
No. 門下 人数 備考
1 高柳敏夫門下 8人 1970年 2人
2 藤内金吾門下 7人 1970年 3人
3 木見金治郎門下 5人
3 渡辺東一門下 5人
3 佐瀬勇次門下 5人 1970年 2人

(※2)当時の現役棋士106名(棋士番号有)が対象

 

1980年に入って、中原誠十四世名人をはじめ、田中寅彦九段島朗九段らを擁する高柳敏夫門下が勢いをつけてきます。

 

1990年(※3)
No. 門下 人数 備考
1 佐瀬勇次門下 9人
2 高柳敏夫門下 8人
3 藤内金吾門下 7人

(※3)当時の現役棋士134名(棋士番号有)が対象

 

そして、1990年に入り、米長邦雄永世棋聖を筆頭に、高橋道雄九段丸山忠久九段らを擁する佐瀬勇次門下がトップに躍り出ます。

 

2000年(※4)
No. 門下 人数 備考
1 佐瀬勇次門下 11人
2 高柳敏夫門下 8人
3 藤内金吾門下 6人
3 花村元司門下 6人 1990年 5人

(※4)当時の現役棋士154名(棋士番号有)が対象

 

続く、2000年も佐瀬門下の勢いは止まらず弟子の人数がピークの11人に達します。

 

2010年(※5)
No. 門下 人数 備考
1 佐瀬勇次門下 8人
2 森信雄門下 7人 2000年 3人
3 高柳敏夫門下 6人
3 関根茂門下 6人 2000年 4人
3 桜井昇門下 6人 2000年 2人
3 米長邦雄門下 6人 2000年 3人

(※5)当時の現役棋士165名(棋士番号有)が対象

 

2010年もかろうじて佐瀬門下がトップを守るも、ここから森信雄門下の勢いが増していきます

 

2020年(※6)
No. 門下 人数 備考
1 森信雄門下 11人
2 所司和晴門下 7人 2010年 3人
3 安恵照剛門下 6人 2010年 5人
3 桜井昇門下 6人
3 米長邦雄門下 6人

(※6)当時の現役棋士174名(棋士番号有)が対象

 

そして、2020年に入り、森信雄門下が勢力を拡げ、それに続く所司和晴門下も急激に数を伸ばしています

 

現行三段リーグを突破してきた師弟

現行の三段リーグは1987年度より新しく始まりましたが、そこを突破した師弟同士の組み合わせは現在まで10組となっています。

2021年6月20日現在

No. 師匠 回(三段リーグ) 弟子 回(三段リーグ)
1 畠山鎮 5(1989前) 斎藤慎太郎 50(2011後)
2 鈴木大介 15(1994前) 梶浦宏孝 56(2014後)
3 木村一基 20(1996後) 高野智史 57(2015前)
4 深浦康市 9(1991前) 佐々木大地 58(2015後)
5 杉本昌隆 7(1990前) 藤井聡太 59(2016前)
6 大平武洋 30(2001後) 長谷部浩平 62(2017後)
7 小倉久史 3(1988前) 山本博志 63(2018前)
8 畠山鎮 5(1989前) 黒田尭之 64(2018後)
9 豊川孝弘 9(1991前) 渡辺和史 65(2019前)
10 中座真 18(1995後) 谷合廣紀 66(2019後)

 

第1号畠山慎八段と斎藤慎太郎八段の師弟コンビとなっており、畠山門下は現行三段リーグ出身の棋士を2名も輩出しています。

 

師弟ともにタイトルゲッツ!

棋士(棋士番号有)327名中、師弟ともにタイトルを獲得した組み合わせは5組あります。

2021年6月20日現在

No. 師匠 初タイトル 弟子 初タイトル
1 大山康晴 九段 有吉道夫 棋聖
2 大内延介 棋王 塚田泰明 王座
3 二上達也 王将 羽生善治 竜王
4 米長邦雄 棋聖 中村太地 王座
5 桐山清澄 棋王 豊島将之 棋聖

 

残念ながら、現行三段リーグ出身の師弟がともにタイトルを獲得した組み合わせはまだ誕生していません。

師匠のみであれば、深浦康市九段木村一基九段が既にタイトル経験者ですので、この記録を達成するには智史五段佐々木大地五段の今後の活躍次第となります。

 

師弟の絆

いかがだったでしょうか。

現代社会においても尚、師弟制度が存在していることは、もしかすると時代錯誤の感があるかも知れません。

しかし、日本古来の文化である将棋が現代まで脈々と受け継がれて発展してきたのは、そういう師弟関係があったからこそだと思います。

これから100年後の未来においても、将棋界における師弟の絆はさらに続いていくことになるでしょう。

 

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