記録

羽生vs佐藤 165局を振り返ってみた

6月8日、第80期A級順位戦において羽生善治九段と佐藤康光九段の対局が行われ、130手で後手羽生九段が勝ちました。

これで両者の対戦成績は羽生九段の110勝佐藤九段の55勝となりました。

 

ここでは、そんな長年ライバルであり続ける両者の165局の軌跡を調べてみました。

 

1位までカウントダウン

現在、両者で積み上げてきた165局もの対局は羽生九段自身の同一対戦カード記録としては第2位となっています。

第1位は谷川浩司九段との168局ですが、ここ2年間は対局が行われていません。

この先、両者が同一クラス(B1以上)に在籍し続ければ、第1位となる可能性は非常に大きいです。

2021年6月13日現在

羽生善治九段の同一対戦記録トップ3
No. 棋士名 対戦成績 棋士名 対局数 勝率
1 羽生善治 106-62 谷川浩司 168 0.6310
2 羽生善治 110-55 佐藤康光 165 0.6667
3 羽生善治 78-60 森内俊之 138 0.5652

初対局の勝敗は?

両者の初対局は第11回(1988)若獅子戦の準決勝の舞台です。

結果は先手の佐藤康光四段(当時)が161手で勝利をあげています。

161手という手数が示すように両者の白熱した戦いが想像できます。

佐藤四段はこのまま決勝に進みますが、中川大輔四段(当時)に敗れ、準優勝に終わっています。

 

メモ

・羽生九段は若獅子戦において、第10回(1986)、第12回(1988)で優勝を飾っています。

・結果的には佐藤九段が羽生九段の若獅子戦3連覇を阻止した形となりました。

 

現在の対戦成績からして、初対局が羽生九段の黒星であるとは少し意外な気もします(佐藤九段に怒られそうですが・・・)

 

タイトル戦での初対戦

両者のタイトル戦での対局は過去、21回行われており、羽生九段の17勝、佐藤九段の4勝となっています。

(以下、敬称略)

タイトル戦での初対戦は第6期(1993)竜王戦での舞台で羽生が佐藤を挑戦者として迎え撃つ形となりました。

第1局は先手羽生が113手で勝ったものの、結果は4-2の対戦スコアで佐藤の竜王奪取となりました。

最終局(第6局)において両者の対局数は14局目となり、対戦成績は7勝7敗の五分で全くの互角です。

しかし、これが両者の対戦成績五分の最後となります。

 

徐々に均衡が崩れる

翌年、第7期(1994)竜王戦は、羽生が挑戦者となり、リターンマッチが実現します。

羽生が初戦を制し、そこから怒涛の3連勝。

佐藤も意地を見せ、4局、5局を制するものの第6局を落とし、竜王の座を明け渡すこととなります。

最終局(第6局)において両者の対局数は20局目となり、対戦成績は羽生の11勝、佐藤の9勝

続く第8期(1995)竜王戦においては今度は佐藤が挑戦者として名乗りを上げ、2年連続のリターンマッチとなりました。

しかし、結果、羽生が4-2の対戦スコアで佐藤を返り討ちとし、自身初の竜王防衛を果たしました。

ここまでの対戦成績は羽生の15勝、佐藤の11勝

そして、ここを境に徐々に両者の対戦成績の均衡が崩れ始めます。

 

屈辱の12連敗

第56期(1997)A級順位戦において、佐藤は羽生に屈し、そこから対羽生戦6連敗。

そして、両者6度目のタイトル戦である第39期(1998)王位戦第6局目において、羽生が佐藤を下し、王位戦6連覇を決めます。

敗れた佐藤はここで意気消沈したのか、この第6局目を含め、対羽生12連敗を喫します。

(この12連敗時点での対戦成績は羽生の40勝佐藤の17勝

この連敗は佐藤の対羽生戦での最長連敗記録となっています。

これ以降も幾度となく佐藤は羽生に対して多くの連敗を味わうこととなります。

 

佐藤九段の対羽生戦における連敗数

◆3連敗 12回

4連敗 1回

5連敗 1回

6連敗 1回

8連敗 1回

10連敗 1回

12連敗 1回

 

およそ1ヶ月に2回のペース

2005年度、両者は23局もの対戦で相まみえます。

この23局は両者の年度最多対局数となっています。

23局のうち、A級順位戦を除いてすべてタイトル戦(棋聖戦、王位戦、王座戦、王将戦)での対戦です。

棋聖戦は王者である佐藤が防衛したものの、残りの3つは佐藤の挑戦失敗で終わっています。

この23局の対戦成績は羽生の14勝、佐藤の9勝となっています

 

もう一度夢を

第79期(2008)棋聖戦を最後に両者のタイトル戦は行われておりません。

以降は年1~4回ほどの対戦となっています。

現在、渡辺明名人をはじめ、豊島将之竜王、永瀬拓矢王座、藤井聡太二冠と活きのいい棋士がタイトルを保持している中、両者が再びタイトル戦で相まみえることは年々厳しくなってきています。

しかし、それでも尚、再び両者のタイトル戦での対戦を願ってやまないファンは多くいるのではないでしょうか。

 

最高峰の頭脳vs頭脳

駆け足でこれまでの両者の対局の軌跡を振り返ってきましたが、いかがだったでしょうか。

確かに数字の上では羽生九段が対戦成績を大きく引き離していますが、将棋の内容はどれも僅差のものばかりです。

先日のA級順位戦においても、羽生九段が逆転勝利をおさめています。

このように、165局を振り返ってみると、やはり、両者のタイトル戦初対戦であった第6期竜王戦が一つのターニングポイントだった気がします。

これからライバルになりうるであろう佐藤九段に羽生九段が竜王を奪われ、きっとそこで羽生九段は最大の危機を感じたことでしょう。

「ここで佐藤九段を叩いておかないと、自身の第一人者になるべく道が閉ざされてしまう」

そして、羽生九段は佐藤将棋を徹底的に研究し、弱点を見つけ、翌期の竜王戦におけるリターンマッチでの勝利に結びつける。

あのリターンマッチで、もし羽生九段が敗れていれば、この後の両者の対戦成績は大きく変わっていたかも知れません。

と勝手な推測を立ててしまいましたが、でも、確実に言えることはお互いに実力を認め合い、両者ともに高い次元の将棋を維持し続けてきたからこそ、このような多くの対局が生まれてきたのでしょう。

両者の将棋人生はこれからまだまだ続きます。

未来に続くであろう両者の熱い戦いに期待です。

 

-記録

© 2024 将棋ペンタゴン