前人未踏であるタイトル100期を目前に足踏み状態が続いている羽生善治九段。
99期目のタイトルである竜王を失冠して1月1日現在で3年が過ぎようとしています。
今や「九段」という呼称も違和感がなく、逆にそれが羽生時代を知る者としてはそこはかとない寂しさを感じます。
これまでにもタイトルを失冠後、長いブランクの時を経て、再びタイトル奪取に成功した棋士たちがいます。
果たして今後、羽生九段の復活はあるのでしょうか。
システム復活
時は四半世紀前。
藤井システムというリーサルウェポンを引っ提げ、四間飛車ブームを牽引した藤井猛九段。
その破壊力はすさまじく、並み居る強豪をはね除け、史上初の竜王三連覇を成し遂げます。
しかし、2001年の竜王失冠後は日本シリーズの優勝(2002年、2005年)があるのみで長く不本意な時期を過ごすことになります。
そして、第24期銀河戦。
これまでの鬱憤を晴らすかのように予選から怒濤の8連勝を果たし、決勝でも伝家の宝刀藤井システムを駆使し見事優勝に輝きます。
最後の棋戦優勝から10年8ヶ月、竜王失冠からは実に14年8ヶ月ぶりの美酒に酔いしれた瞬間でした。
復活後、3連覇
羽生善治九段の師匠である二上達也九段も見事なる復活を遂げた棋士の一人です。
第9期棋聖戦において大山康晴十五世名人からタイトルを奪われ、無冠に陥ります。
その後、タイトル戦には出場するもタイトルの壁は厚く、実にタイトル戦7連続敗退を喫します。
しかし、第37期棋聖戦で戦前の予想を覆し、棋聖を奪取。
タイトル失冠後、実に14年ぶりの栄誉に輝きます。
その後も二上九段の快進撃は続き、棋聖3連覇を達成します。齢も50を超える快挙でした。
14年ものの年月は今もなおタイトル失冠から奪取におけるブランク最長記録となっています。
ちなみにタイトル失冠後、5年以上のブランクを経て、再戴冠した棋士は以下のとおりです。
棋士名 | 棋戦(失冠日) | 棋戦(奪取日) | 期間 |
二上達也 | 第9期棋聖戦(1967/1/10) | 第37期棋聖戦(1981/1/28) | 14年0ヶ月 |
郷田真隆 | 第73期棋聖戦(2002/8/1) | 第37期棋王戦(2012/3/17) | 9年7ヶ月 |
広瀬章人 | 第52期王位戦(2011/9/13) | 第31期竜王戦(2018/12/21) | 7年3ヶ月 |
加藤一二三 | 第8期十段戦(1969/12/27) | 第2期棋王戦(1977/3/25) | 7年2ヶ月 |
屋敷伸之 | 第58期棋聖戦(1991/7/31) | 第68期棋聖戦(1997/7/15) | 5年11ヶ月 |
森雞二 | 第41期棋聖戦(1983/1/21) | 第29期王位戦(1988/9/22) | 5年8ヶ月 |
米長邦雄 | 第23期棋聖戦(1974/2/4) | 第4期棋王戦(1979/4/3) | 5年1ヶ月 |
羽生世代の底力
第69期王座戦の挑戦者決定トーナメントの決勝に佐藤康光九段が進出したり、また第47期棋王戦においては郷田真隆九段が挑戦者決定二番勝負に進出したりといわゆる羽生世代の面々が復活の兆しを見せています。
郷田真隆九段がタイトルを最後に失ったのが4年9ヶ月前のこと。
佐藤康光九段にいたっては8年9ヶ月もの時が過ぎようとしています。
羽生九段も二人の奮闘ぶりを見て、何か期するものがあるのではないでしょうか。
ちなみに1月1日現在、タイトル失冠3年以上10年以内の現役棋士は以下のとおりとなります。
(2022年1月1日現在)
棋士名 | 棋戦(失冠日) | 期間 |
佐藤康光 | 第62期王将戦(2013/3/7) | 8年9ヶ月 |
森内俊之 | 第27期竜王戦(2014/12/4) | 7年0ヶ月 |
糸谷哲郎 | 第28期竜王戦(2015/12/3) | 6年0ケ月 |
郷田真隆 | 第66期王将戦(2017/3/15) | 4年9ヶ月 |
菅井竜也 | 第59期王位戦(2018/9/27) | 3年3ヶ月 |
中村太地 | 第66期王座戦(2018/10/30) | 3年2ヶ月 |
羽生善治 | 第31期竜王戦(2018/12/21) | 3年0ヶ月 |
100期を目指して
いかがだったでしょうか。
羽生九段がタイトルを失って3年。
今回ご紹介した棋士に比べると、まだまだタイトル奪取の希望は残されています。
若手の台頭で情勢は厳しいことに変わりありませんが、一将棋ファンとしては自身の師匠のように華麗なる復活を願ってやみません。